石田波郷 (いしだ はきょう)
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生涯
石田波郷は1913年(大正2年)3月18日、愛媛県温泉郡垣生村大字西垣生(現在の松山市)に父惣五郎、母ユウの次男として生まれた。本名は哲大である。四男四女の第13子で、家業は自作と小作を兼ねる農家であった。垣生尋常高等小学校を卒業後、1925年4月に県立松山中学校(現在の愛媛県立松山東高等学校)に入学した。
4年生のとき、同級の中富正三(後の俳優・大友柳太朗)に勧められて俳句を始めた。俳号は「山眠」「二良」とつけた。5年のときには同級生と「木耳会」という句会を起こし、また同校の教諭であった渋柿派の俳人堀田北田に指導を受けたり、村上霽月主宰の今出吟社に出入りしたりした。
1930年3月、松山中学校を卒業し、自宅で農業を手伝いながら、4月に隣村の五十崎古郷を訪ね指導を受けた。この際、古郷から「波郷」の号を与えられた。古郷は『ホトトギス』に投句していた人物であったが、ちょうどこのころ刊行されたばかりの水原秋桜子『葛飾』に感銘を受け、師弟ともども『馬酔木』門となった。波郷は『馬酔木』1930年9月号にて初入選し、1932年2月号にて初巻頭を収めた。これを契機として上京し、秋桜子の下で句作に専心し、10月頃より『馬酔木』事務を手伝った。1933年4月に『馬酔木』で自選同人制が敷かれた際には最年少で同人に推されており、のちに高屋窓秋、石橋竹桜子とともに『馬酔木』の三羽烏と呼ばれるようになった。
1934年4月、明治大学専門部文科に入学した。翌月より編集長高屋窓秋の下で『馬酔木』編集に携わった。1935年11月、第1句集『石田波郷句集』を刊行。1936年3月、大学を中退し、久保田万太郎を慕って句作に専念した。同年9月、馬酔木新人会『馬』創刊に同人参加し、1937年5月より同選者となった。同年9月、『馬』と『樹氷林』を合併し、句誌『鶴』を創刊して主宰となった。1939年8月には句集『鶴の眼』を上梓し、この頃『俳句研究』座談会に加藤楸邨、中村草田男らと出席し、彼らとともに「難解派」「人間探求派」と呼ばれるようになった。
1942年3月、縁談で吉田安嬉子(石田あき子)と会い、6月に結婚した。また同月に『馬酔木』同人と編集を辞退した。1943年5月、長男修大が誕生。6月、埼玉県浦和市本太後原の岳父の貸家に転居した。9月に召集を受け、千葉県の佐倉に駐屯していた陸軍連隊に入隊し、10月初旬に華北へ渡り、山東省臨邑に駐留した。1944年3月、左湿性胸膜炎を発病し、陸軍病院を転々とした。1945年1月に博多に帰還し、同年3月に妻子を伴い北埼玉の樋遣川村に疎開した。6月に兵役免除となるが、病気が再び悪化し、以後は死没まで手術と入退院を繰り返しながら俳人としての仕事をこなす日々を送ることとなった。
1946年1月、妻子を伴って上京し、江戸川区葛西にある義兄の吉田勲司宅に仮寓した。3月には江東区北砂町に転居し、以後12年間を北砂町で暮らした。波郷が居住した北砂町周辺は戦災の多大な被害によって荒涼としており、そのなかで波郷は焦土に生きる人々やそこからの復興を俳句に詠んだ。また同年3月に戦時休刊していた『鶴』を復刊した。1948年2月、『馬酔木』同人に復帰し、1950年8月からは編集も担当し、1957年1月に藤田湘子へ譲るまで続けた。
1955年、『定本石田波郷全句集』にて第6回読売文学賞を受賞した。1958年3月、東京都練馬区谷原町の新築の家に移った。1969年4月、『酒中花』により第19回芸術選奨文部大臣賞を受賞した。同年11月21日、東京都清瀬市の国立療養所東京病院において心臓衰弱のため死去した。56歳であった。墓所は東京都調布市の深大寺で、戒名は風鶴院波郷居士である。
俳句歴
波郷は松山中学校在学中に俳句を始め、1930年に五十崎古郷から「波郷」の号を与えられた。古郷の指導により水原秋桜子主宰の『馬酔木』に投句を始め、1932年に上京して秋桜子門下の代表的俳人となった。1937年には俳誌『鶴』を創刊し、主宰として人間探求の句を主導した。
初期の『鶴の眼』(1939年)では『馬酔木』の誌風に涵養され、青春性を湛えた叙情的な句を詠んだが、のちに「放縦なる市井彷徨」「青春の自負と不安の時代」と自ら呼ぶ時期を経て、人間性に深く根ざした俳句を追求した。波郷は「俳句は文学ではないのだ。俳句はなまの生活である」と語り、自身の生活を見つめた、私小説的とも言われる境涯性の俳句を確立していった。
昭和初期に『馬酔木』周辺で起こった新興俳句運動に対しては、その季の軽視や切れ字の忌避などによる散文化に対して批判的な立場を取った。1942年から翌年にかけては『鶴』において「俳句の韻文精神徹底」を説くとともに、切れ字を用いた古典の格と技法を重視した。この時期の成果が句集『風切』(1943年)である。波郷は特に、上五を「や」で切り、中七以下を一気に詠み下す形式を好んで用いた。
従軍中の1943年に「雁やのこるものみな美しき」を詠んだ。戦後1946年の『鶴』復刊号では「俳句は生活の裡に満目季節をのぞみ、蕭々又朗々たる打坐即刻のうた也」の宣言が掲げられ、波郷俳句のキャッチフレーズとなった。以後、焦土詠の『雨覆』(1948年)を経て、従軍中より発症した病の中での生活が題材の中心となった。波郷が北砂町で詠んだ俳風は「焦土諷詠」といわれた。特に『惜命』(1950年)収録の句群は病涯詠の絶唱とされ、闘病俳句の最高傑作として高く評価されている。『春嵐』(1957年)、『酒中花』(1968年)以後は、入退院を繰り返す生活を静かに見つめる句を作った。
その他の特記事項
波郷は戦後の近代俳句の再建に大きな役割を果たした。1946年9月に総合俳誌『現代俳句』を創刊し、編集に当たった。また西東三鬼らと協力し現代俳句協会設立に尽力し、1947年に高浜虚子らとともに現代俳句協会を創立した。1959年には中村草田男、星野立子とともに「朝日俳壇」選者となった。
波郷が江東区北砂町に居住していた1957年3月から1958年2月にかけて、『読売新聞』江東版に「江東歳時記」を連載した。江東・墨田などの江東5区を波郷自らが取材して、季節の風物・行事・産業・人物を俳句と短文で紹介し、波郷の撮影した写真が掲載されたこともある。江東区は2000年、北砂町に石田波郷記念館を開設した。
波郷は1957年、清瀬の国立東京療養所に入院していた際、同中学校創立10周年を記念して東京都清瀬市立清瀬中学校の校歌を作詞した。長男の修大は日本経済新聞社の論説委員を経て流通経済大学法学部教授となり、父についての著作を多く残している。
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- やけあとの たばこのはなを かくすなし
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煙草の花
たばこのはな
季節: 秋(初秋) 分類: 植物(ナス目) -
新版 角川俳句大歳時記 秋p.694
- いのこずち ともどちつまを ふとらしめ
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いのこづち
いのこずち
季節: 秋(三秋) 分類: 植物(ナデシコ目) -
角川ソフィア文庫 第4版増補 俳句歳時記 秋p.190
- くずさくや つまごいむらの あざいくつ
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葛の花
くずのはな
季節: 秋(初秋) 分類: 植物(マメ目) -
角川ソフィア文庫 第5版増補 俳句歳時記 秋p.210
- いつまでも ちちははとおし しんあずき
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小豆
あずき
季節: 秋(初秋) 分類: 植物(マメ目) -
文藝春秋 最新俳句歳時記 秋p.173
- あおみかん くいふぼとまた わかれたり
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青蜜柑
あおみかん
季節: 秋(三秋) 分類: 植物(ムクロジ目) -
平井照敏編 新歳時記 秋p.264
- ふぼいませば からたちのみの かずしれず
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枳殻の実
からたちのみ
季節: 秋(晩秋) 分類: 植物(ムクロジ目) -
文藝春秋 最新俳句歳時記 秋p.340
- みちくさの ひえもたれたり ながすそに
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野稗
のびえ
季節: 秋(初秋) 分類: 植物(総称) -
文藝春秋 最新俳句歳時記 秋p.158
- びょうしつの なかまでもみじ してくるや
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黄葉
もみじ
季節: 秋(晩秋) 分類: 植物(総称) -
角川ソフィア文庫 第5版増補 俳句歳時記 秋p.164
- ねむらんと じょやのこがまく おるごーる
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除夜
じょや
季節: 冬(仲冬) 分類: 時候(暦) -
ハンディ版 入門歳時記 新版p.570
- かざはなや むねにはとわの まさつおん
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風花
かざはな
季節: 冬(三冬) 分類: 天文(水) -
平井照敏編 新歳時記 冬p.30
- せつれいよ おんなひらりと ふねにのる
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冬の山
ふゆのやま
季節: 冬(三冬) 分類: 地理(山野) -
角川ソフィア文庫 第5版増補 俳句歳時記 冬p.52
- しもばしら はいくはきれじ ひびきけり
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霜柱
しもばしら
季節: 冬(三冬) 分類: 地理(水辺) -
文藝春秋 最新俳句歳時記 冬p.47
- やけあとに すきとおりけり かんのみず
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寒の水
かんのみず
季節: 冬(晩冬) 分類: 地理(水辺) -
角川ソフィア文庫 第5版増補 俳句歳時記 冬p.56
- ひょうこうや ゆくもかえるも ごうごうと
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氷江
ひょうこう
季節: 冬(晩冬) 分類: 地理(水辺) -
文藝春秋 最新俳句歳時記 冬p.336
- しょうぼうしゃ むれゆくこきゅう こんなんり
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消防車
しょうぼうしゃ
季節: 冬(三冬) 分類: 人事(生活) -
文藝春秋 最新俳句歳時記 冬p.164
- すちーむに ともによるひと ははににし
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スチーム
すちーむ
季節: 冬(三冬) 分類: 人事(生活) -
文藝春秋 最新俳句歳時記 冬p.146
- こうぞさらす しょうじょのひざの かなしさよ
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楮蒸す
こうぞむす
季節: 冬(初冬) 分類: 人事(労働) -
文藝春秋 最新俳句歳時記 冬p.126
- あしおとたかし あおきじゃけつ のかんごふは
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ジャケツ
じゃけつ
季節: 冬(三冬) 分類: 人事(衣服) -
文藝春秋 最新俳句歳時記 冬p.166
- かんたまご ばらいろさせる あさありぬ
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寒卵
かんたまご
季節: 冬(晩冬) 分類: 人事(飲食) -
文藝春秋 最新俳句歳時記 冬p.356
- ひゃっぽうに がきうずくまる じょやのかね
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除夜の鐘
じょやのかね
季節: 冬(仲冬) 分類: 宗教(仏教) -
ハンディ版 入門歳時記 新版p.571
- としこしの じょちゅうおとしと もうでけり
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年越詣
としこしもうで
季節: 冬(仲冬) 分類: 宗教(神道) -
平凡社 俳句歳時記 冬p.377
- しぐれきや はやしにいれば たびごころ
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芭蕉忌
ばしょうき
季節: 冬(初冬) 分類: 宗教(忌日) -
ハンディ版 入門歳時記 新版p.478
- ろうざんの けいとうふしぬ らんせつき
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嵐雪忌
らんせつき
季節: 冬(初冬) 分類: 宗教(忌日) -
よくわかる 俳句歳時記p.558
- やむまどの おちばいろして せきていき
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石鼎忌
せきていき
季節: 冬(仲冬) 分類: 宗教(忌日) -
新版 角川俳句大歳時記 冬p.511
- よこみつき もっけいいよよ かたくなに
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横光忌
よこみつき
季節: 冬(仲冬) 分類: 宗教(忌日) -
平凡社 俳句歳時記 冬p.406
- わびすけの むらがるひなり そうじょうき
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草城忌
そうじょうき
季節: 冬(晩冬) 分類: 宗教(忌日) -
新版 角川俳句大歳時記 冬p.514
- ふゆのもず のがれきたりし ごとくなり
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冬の鵙
ふゆのもず
季節: 冬(三冬) 分類: 動物(鳥類) -
平井照敏編 新歳時記 冬p.326
- いつもくる わたむしのころ じんだいじ
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綿虫
わたむし
季節: 冬(初冬) 分類: 動物(昆虫等) -
ハンディ版 入門歳時記 新版p.527
- はぼたんや わがおもうかお みなえまう
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葉牡丹
はぼたん
季節: 冬(晩冬) 分類: 植物(アブラナ目) -
平井照敏編 新歳時記 冬p.386
- ふゆそうび いろのあけぼの やけあとに
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冬薔薇
ふゆばら
季節: 冬(三冬) 分類: 植物(バラ目) -
文藝春秋 最新俳句歳時記 冬p.90
- なかぞらの はとやだいがく かれはてぬ
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冬枯
ふゆがれ
季節: 冬(三冬) 分類: 植物(総称) -
ハンディ版 入門歳時記 新版p.499
- きばのはし いくつこえきぬ まつのうち
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松の内
まつのうち
季節: 新年(新年) 分類: 時候(暦) -
ハンディ版 入門歳時記 新版p.645
- はつしょうらい むさしののとも かぞうべし
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初松籟
はつしょうらい
季節: 新年(新年) 分類: 天文(風) -
文藝春秋 最新俳句歳時記 新年p.25
- おとろうや いちわんおもき こしょうがつ
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小正月
こしょうがつ
季節: 新年(新年) 分類: 人事(行事) -
ハンディ版 入門歳時記 新版p.648
- ほとしろし はまやづくりの みこのては
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破魔弓
はまゆみ
季節: 新年(新年) 分類: 人事(生活) -
ハンディ版 入門歳時記 新版p.614
- つまのざの ひなたありけり ふくじゅそう
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福寿草
ふくじゅそう
季節: 新年(新年) 分類: 植物(キンポウゲ目) -
ハンディ版 入門歳時記 新版p.624